好きという情熱を 突き詰めていく

茨城ロボッツ

M-HOPE事業部

春日 結汰

茨城が誇る地方創生のモデルケース

茨城ロボッツは2014年に創設された、水戸市・つくば市をはじめとする茨城県全域をホームタウンとするBリーグ所属のプロバスケットボールチームです。2016年につくば市から水戸市へ本拠地が移転し現在の名称となりました。「スポーツ・エンターテインメント・メディアにより夢・誇り・活力を生み出し、地方創生のさきがけモデルをつくる」をミッションに掲げ、単なるスポーツクラブの立場を超えた地域連携に力を入れています。春日結汰さんは、入社1年目にして2023年のBリーグオールスターという大プロジェクトを主担当として経験し、現在は社会貢献事業「M-HOPE」を軸に地域との架け橋として活躍されています。

一度は経営破綻を経験しながらも、年間13万人を動員するクラブへと成長した茨城ロボッツ、そしてその背景にある「地域と共に歩む」という哲学まで、幅広く伺いました。

バスケでどれだけ地域を盛り上げられるか

新卒で株式会社滋賀レイクスターズに入社後、一時は同滋賀県の銭湯で働いたのち、縁あって茨城ロボッツに入社。早々に任されたのが、コロナで一度は延期になったBリーグオールスター再誘致のプロジェクトマネージャーという重責でした。「滋賀では地域連携を担当してたわけじゃないので初の畑でした。自治体、Bリーグ、スポンサー、それぞれのミッションがあって、その中で『これならいけるかな』っていうのをちょっとずつ擦り合わせて...という感じです。3日間ではありましたが、オールスターの時期にやってきたことを翌シーズンに続けてできたことがいくつかありました。単発で終わらずに持続可能な状態で水戸・茨城に残していくという働きかけもできたのがすごく良かった。この経験が、現在の「M-HOPE」事業の基盤となっています」

「茨城ロボッツが“地域と一緒に進んでいきたい”と強く思っているのは、これまでのクラブの歴史が深く関係しているんです。実はロボッツの前身の会社は、10年くらい前に一度経営破綻してしまって…。そこから新会社としてリスタートを切った直後、Bリーグ2部に参入するための条件だった新アリーナの話が、ギリギリになって白紙になってしまったんです。タイムリミットが迫る中で水戸市が受け入れを決めてくれた、っていう大きな出来事がありました」

同じ頃、現オーナーが久しぶりに地元の水戸駅前を見たときに、「昔よりちょっと元気がないな…」と感じたことから、“水戸ど真ん中再生プロジェクト”が発足。このプロジェクトの第一弾として新生・茨城ロボッツが誕生し、地域全体で「ロボッツを街のアイコンとして育てよう!」とする流れが一気に動き出しました。

バスケットボールのためにあるクラブという一側面ではなく、バスケットボールをテーマに、エンターテインメントの力を使って地域をどれだけ盛り上げられるか。茨城ロボッツの哲学が、ここに生まれました。

持続可能な地域課題解決の仕組み

現在春日さんが中心となって展開している「M-HOPE」は、単なる社会貢献活動ではありません。地域団体、自治体、企業、NPO。様々な地域のプレイヤーと茨城ロボッツの「できること」と地域の「ニーズ」をマッチングさせ、持続可能な地域課題解決の仕組みを作り上げています。仕組みを構築するうえで、大切にしていることはなんでしょうか。

「1つの企画に対して、複数の団体を巻き込むように意識しています。例えば、児童養護施設の子どもたちや高齢者の方を試合へご招待する「M-HOPE TICKET」。これは茨城県、社会福祉協議会をはじめとする公共団体の皆さんと運用しています。これは「コロナでエンタメに触れる機会が減った」、「自立後の余暇活動の選択肢が少ない」などの課題感を共有し、この企画がその解決策になるとゴールを共有したから協働が叶っています。そして、その想いにスポンサーの皆さまが賛同してくれています。この複数のステークホルダーと創る仕組みがただのアクティベーションではなく、地域課題に対する1つのアンサーとして成り立つんです」

「僕はボンドとアンプ、という表現が今の茨城ロボッツの役割だと思っています。ボンドはまさにくっつける力。茨城ロボッツを通すことによって、つながらなかったであろう3者、4者が一体となる取り組みが実現できます。そしてアンプは、できた事業を茨城ロボッツを通して広く発信することによって、より大きくする力です。『ロボッツがやってるから』と、その取り組みを大きく広げる力があります。特に、茨城ロボッツのファン・ブースターの皆さんは積極的にこの輪に参加してくれているイメージがあります。就労支援の一環で始めた「ロボスケパン」の販売も、ファン・ブースターの皆さんが購入し、広めてくれてここまで有名になりました。「ブースター」と「地域貢献」を繋げることができるのも、まさにボンドの力だと思っています」

自分の「好き」に正直に

そして春日さんの頭の中にある、さらに大きな構想についても触れました。「県外出身者の僕の個人的なイメージですが、茨城県って、地域ごとにアイデンティティが確立されているからこそ、県全体をひとつにまとめる旗印があまりないイメージがあります。全国で唯一、県域の民放テレビ局がないこともその一因だと感じています。僕はM-HOPEを通じて、県全体が社会課題に当事者意識を持てるような仕組みを作りたい。それもできるだけエンタメの力を使いながら楽しくやりたい。たとえば県内のスポーツクラブが一堂に会して、地域連携企画を発表しあうアワードを開催できたら面白いですよね」

クラブを単なるスポーツ団体ではなく「地方創生のモデル」として育てたいという想い。その根底には、自分自身が好きなものを信じ抜いてきた経験があるようです。「社会人になると、自分のアイデアや考え方が正しいのか不安になることも多く、否定されることもある。でも“これが好きだ”と胸を張れることがあれば、それが道を切り開く力になる。今の僕にとってはそれが茨城ロボッツですし、ファンやブースターの皆さんやこれからロボッツを知る人にとってそんな存在だと嬉しいなと思います。僕は、滋賀でたくさんのブースターの皆さんに可愛がっていただき、クラブに携われる喜びと自分の”好きな瞬間”を育むことができました。滋賀を離れる最後の日、送り出してくれたのは銭湯常連のおっちゃんたちでした。茨城では既に40市町村巡りました。相変わらず最寄りの銭湯にも通っています。ご縁がつながり、ここ茨城で自分が好きだと信じた時間を燃料にこの仕事ができていることを誇りに思いますし、これからも茨城で”好き”が広がっていくといいなと思っています」

茨城ロボッツは単なるプロバスケットボールチームではありません。地域の希望をつなぎ、育て、発信する、まさに地域資源と呼べる存在です。そして、その中心にいる春日さん自身が、地域と共に成長し続ける、若きリーダーとして茨城を牽引していました。

茨城ロボッツ

M-HOPE事業部

春日 結汰

新潟県出身。立命館大学でプロスポーツビジネスについて学ぶ。新卒で株式会社滋賀レイクスターズに入社。同社を退職後、滋賀県膳所駅にある銭湯で働く。その後新潟に帰郷し、2022年に株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントに入社する。1年目からBリーグオールスタープロジェクトを担当し、地域連携の実務経験を積む。現在は地域団体、自治体、企業、NPOなど多様なステークホルダーと連携し、持続可能な地域課題解決の仕組み作りに取り組んでいる。
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